堂々たる日本人―知られざる岩倉使節団 (祥伝社黄金文庫)
本書は明治4年に明治政府の中枢をなす大物たちが2年近くに渡って欧米諸国を視察する「岩倉使節団」の様子を描いたものである。
興味深いのは、欧米社会&政治体制&価値観を当時の日本人がどのように分析したかである。
共和制、民主主義、君主制、個人主義などをどう捉えたのか?
それらを鋭く分析しているのには驚かされる。
戦後日本では民主主義が絶対的に優れたものと勘違いしているように思えるが、当時の日本人は当たり前のようにそれのデメリットを見抜いている。
また、「岩倉使節団」の様子だけでなく、まだまだ不安定だった明治黎明期の日本の政局も描かれていて、個人的に、この辺の知識が疎かったため非常に参考になった。
クアトロ・ラガッツィ (上) 天正少年使節と世界帝国 (集英社文庫)
プロローグに呈示された著者の主題は壮大なものです。一つの出来事からの大きなモティーフの抽出、そしてそのモティーフ自体が著者の西洋との過去に接触に触媒されたものですから。しかし上巻ではその壮大さがなかなか浮かび上がってはこなかったというのが正直な感想です。上巻では、大部分が使節派遣までの前史が中心となります。正直なところ、日本での地理と時代が、かなりあちらこちらに前後するので、かなり読みにくいと印象をうけました。学術書と思われるほど註が多いのですが(最も註の詳細は下巻にまとめられている)、学術書というよりは著者の思い入れがかなり強い作品のようです。しかし使節の派遣に至る中での日本における教会内部での2つの考え方というテーゼはそれなりに理解できました。ただ下巻を読んでみないと総合的な評価は難しいようです。